格闘家から猟師へ!石川県加賀市の最年少ハンターが地域のために思うこと。

全国各地で害獣対策が行われていますが、
石川県加賀市でも猟師の方々が日々活動に当たられています。

今回取材するのは、市内で活躍されている猟師の方。
異色の経歴をもつ彼女の思いを是非ご覧ください!

猟師・吉田さくらさん

石川県白山市出身。

大学進学を機に富山県に住所を移し柔道に打ち込む。
その後、30代半ばで格闘家の道を進み、プロデビューまで果たした。

34歳の時、当時怪我の治療をしてくれていた現在の旦那さんと出会い結婚。
旦那さんの地元である石川県加賀市へ移住。

2016年、縁あって猟師としての活動をスタートさせ、
現在、市内最年少の猟師として日々活躍。

Q1 猟師の仕事を教えてください。

まず、猟師の仕事は2シーズンに分かれるんです。
石川県の場合、大まかには猟期(11月〜3月)と害獣駆除期(4月〜10月)です。

猟期は、許可されているエリアであれば狩猟が可能なので、
日の出後に山に入って狩りをして、時には解体所に持ち込んで買い取ってもらいます。

また、作物の被害が出やすい害獣駆除期については、行政の依頼を受けている形になるので、
狩ってよい動物も”鹿”と”イノシシ”と決まっていますし、毎朝見回りをする必要があります。

害獣駆除期は、大体朝4時すぎには山沿いの箱罠を毎朝見回りしてますね。
獲れた害獣についても、自己消費、または無償で解体施設に引き取ってもらいます。


毎朝チームで分担しながら見回りするという

Q2 猟師になろうと思ったきっかけは?

実は、「狩るのが好き!」とかそういうのではありません。

自分の周りには農業をしている人たちが沢山いるんですけど、
彼らが「イノシシに困っている」とか「畑を荒らされた…」とか言っているの聞いて、
どうにか出来ないのかなと思って害獣駆除に興味を持ったのがきっかけです。

身近な人たちの困り事をどうにかしたいというシンプルな所から始まりました。


境内がイノシシの通り道となりグチャグチャに…

Q3 その後、本当に猟師になってしまうのが凄いです。

これは本当にラッキーでした!

facebookで「猟師になりたい」と投稿したら、
知人が「解体上手い人を知ってるよ!」とコメントをくれたんです。

その後すぐに紹介してもらって、トントン拍子で話が進み、今ではその人が自分の師匠です(笑)。

猟師は免許があれば出来るもんではなくて、
師匠や仲間を見つけて初めて出来るものだと思っています。

そう意味で、自分は本当に機会に恵まれて有難い気持ちでいっぱいですね。
なるべくしてなったのかな、と思って日々頑張っています。


猟銃での狩猟と罠での狩猟、二つのバッジ

Q4 0から猟師へ、大変だったことは?

”害獣駆除”という言葉だけを聞くと、「人に害を与える動物を駆除して万歳!」と
受け取られる時もありますが、理由はどうであれ”命を奪う行為”というのは、
そんな甘い世界じゃないってことをいつも痛感します。

ちゃんと仕留めてあげられずに苦しんでいる姿を見ると、
自分の力不足を感じて、申し訳ない気持ちにもなりますし。

ただ、この仕事を誰かがしないと無くならないというのも事実で、
悩もうと思えばどこまででも悩めてしまう「答えのない仕事」なんだと思います

だからこそ、私はシンプルに考えるようにしていて、
コツコツと地域で根付いてくために、自分が出来ることをやると決めました。

Q5 猟師たちが抱える課題はありますか?

やっぱり圧倒的な人手不足と高齢化ではないでしょうか。
石川県加賀市においては、私が最年少で唯一の女性です。

若い人が育っていない一方で、イノシシたちは凄く進化してきていて、
本来春にしか出産しないはずなのに、秋にも小さいイノシシを見かけるようになりました。

暖冬が続いている影響なのか、秋にも出産できるイノシシが出てきてるみたいです。

また、加賀市では数が少ないとされている鹿についても、
県境の福井では既に出没していますので、10年後を考えるとゾッとします…。


獲っては増え獲っては増えのイタチごっこだという

Q6 猟師以外にも地域との関わりはありますか?

ボーダーコリーレスキューネットワーク”という団体に所属していて、
保健所に保護されているボーダーコリーを引き出して、飼い主を探すお手伝いをしています。

これまで4匹のわんちゃんの預かりボランティアをして、
今は5匹目を預かって飼い主を探している最中なんです。

あとは、自分のペットとしてもボーダーコリーを数匹飼っていて、
セラピードッグとして活躍している子もいます。

セラピードッグとは…

セラピードッグは、高齢者を始め、障がいを持つ方や病気の治療を
必要とする患者さんの身体と精神の機能回復を補助する活動を行う犬のこと。

さくらさんの「ヨシ!」を今か今かと待つわんちゃん

Q7 いろんな活動を通じ、地域にどんな未来を描きますか?

猟師という仕事を広めようとか、良いものですと言ってまわりたい訳ではなく、
とにかく目の前で困っている人を助けたいという気持ちでやっています。

レスキュードッグの活動も同じで、人間に捨てられてしまったわんちゃん達に対して
自分ができること出来る範囲でやっている感じなんです。

”保健所に行って犬を救って、地域のためにイノシシを駆除する。”

ちょっと矛盾しているかもしれないですが、
それが私の出来ることで、それで良いんだと思っています!