【石川県加賀市】忙しすぎる酒屋が東京の大学生と地元でおかんアート展をするまで

大学がない石川県加賀市ですが、最近東京や市外・県外から沢山の学生が訪れ、
地域の人と交流し、様々な企画が生まれていることをご存知でしょうか。

今回はそのうちの一つ、「大聖寺おかんアート展」に迫りました。

大聖寺おかんアート展

2017年10月14日(土)ー15日(日)に開催。
石川県加賀市の大聖寺(だいしょうじ)で行われた。

「おかんアート」と名付けられたこの展示会では、
チラシで作られた道具箱や、着物をほどいて作られたちりめん人形など、
「どこかで見たことあるな…」という懐かしさと愛しさが詰まった作品を展示。

”母の手作り展”や”趣味の会”などで同様の作品が飾られる機会は数あれど、
今回は地元酒屋の4代目と東京の大学生が企画したことが話題となり、
「若者×おかん」「ゆるい地域づくり」に共感した多くの世代が訪れた。


おかんアート展のチラシ 全6種

実行委員の「酒屋」と「大学生」

スギヤマ酒店 杉山佳津也さん

石川県加賀市出身。スギヤマ酒店4代目。

高校卒業後、大学進学を機に東京へ移住。
その後、結婚を機に地元に帰ることを意識し、27歳の時に加賀市にUターン。

地元同業者の後継者不足が問題になる中、自分も地域のために何かできないかと、
空き家を利用した”おかんアート展”の開催を決意。

慶應義塾大学 金田ゆりあさん

1994年生まれ。総合政策学部を専攻。

2016年夏、PLUSKAGAという学生ワークショップを通じて加賀市と出会う。

その後、ワークショップ終了後もたびたび加賀に訪れ、地域の取り組みに積極的に参加

空き家活用のテーマを掲げ研究を進める中で、杉山さんと”おかんアート展”を企画。
チラシやグッズの作成までグラフィック関連を全て担当。

Q1 二人の出会いを教えてください。

金田さん(以下:金):
もともと学生ワークショップに参加させていただいた時から、
空き家をテーマに進めていたので、地域の人からも空き家情報を募っていて…。
その中で杉山さんが持っている空き家のことを知ったんです。

杉山さん(以下:杉):
スギヤマ酒店の横にある空き家なんですけど、住んでいる方が亡くなって、
ずっと放置されていたので2015年にうちが購入したんです。

ただ、使い道も決まってないですし、直すにもお金が結構かかりそうで、
そこでずっと止まっている感じでした。


空き家を初めて見学した時の様子

Q2 そもそも「おかんアート」とはなんでしょうか?

杉:
見てもらったらすぐピンと来ると思うんですが、
お母さんやお父さんが作っている作品たちのことです。

オリジナリティに溢れているものもあれば、どこか懐かしかったり、
「うちにもあるわ〜!」と言ってもらえるものも多いですね。


なぜか干支をモチーフにしたものが多い

金:
この「おかんアート」という単語は今回作ったものではなくって、
もともとは兵庫県神戸市の長田区から始まった活動なんです。

長田区の皆さんは、「おかんアート」による地域活動などにも取り組まれていて、
直接連絡を取りながら、参考にさせていただいたり、たくさんご協力いただきました。


長田区にある「下町レトロに首ったけの会」さんより定義をお借りしたとのこと

Q3 使い道のない空き家が展示会に。苦労はありましたか?

杉:
畳の雑巾掛けから始まり、壁を展示会用に模造紙で隠したり、
慣れないことも多くて苦戦しながら進めていった部分は多いです。

ただ、もともとこの空き家をどうにかしたいという思いはあったものの、
それには綿密な計画や、お金をたくさん掛けないと無理と決めつけていたので、
金田さんから「お金を掛けずに出来る範囲でやりましょう」と提案された時には
目から鱗というか、そんなやり方もあるんやな〜と気づかされました。


最初の一歩。掃除からスタート。

Q4 お金をかけずにやる、どうやって実行しましたか?

金:
杉山さんに予算を聞いた時、「1万円くらいで出来たら最高」と言っていたので、
そのつもりで最初から色々一緒に決めていきました。

なるべく物は買わないようにして、地域の人たちが持っていた間接照明や、
閉店した飲食店のテーブル、塾を経営されている方から机をお借りしたり、、。
いろんな方々のご協力があってこその展示会だったなと改めて思います。


協力してくれた地域のみなさん

展示会中にはオリジナルグッズ(Tシャツとステッカー)も販売して、
これが完売したのも大きかったと思います。


好評だったステッカー(2色100円) 自分で色を選ぶ


早速PCに貼ってくれるお客さんも!

それも地域の方が応援の気持ちを込めて買ってくださるのが伝わってきて、
売り上げ以上にその気持ちがすごく嬉しかったです。


グッズに人だかりが出来る時もあったという

Q5 当日の雰囲気はどんな感じでしたか?

杉:
まさに「若者×おかん」が混ざり合った雰囲気になったと思います。

予想以上にたくさんの方が来てくださって、合計で150人くらい来てくださいました。

世代もバラバラで、純粋に友達の作品を見に来た方もいれば、
自分と同じくらいの年代の人も興味を持って訪れてくれました。


おかんアートをジャンルごとに分類したスペースでは多くの人が立ち止まってくれたそう

しかも嬉しかったのが、来てくれる人がしばらく滞在してくれること
僕に話しかけてくれたり、気に入ったおかんアートを写真撮る方もいて、
そういう良い雰囲気が常にありましたね。


おかんアートを通じ作り手と若者が交流する様子 おかん一人ひとりに丁寧に取材したパネルも

Q6 「おかんアート」が地域にもたらしたものは?

金:
まだまだこれからだと思います!

今回いろんな人の協力を得ながら「おかんアート」を探して回ったのですが、
加賀市には本当に可愛い作品がたくさんあって、しかもそのクオリティが高くって、
文化レベルの高い町なんだな、とおかんアートを通じて実感しました。

「おかんアート」を知るだけで、町歩きが楽しくなったり、
お店とお客さんとの交流が生まれたり、そういうムードがどんどん広がってほしいです!


文化人形という繊細な手作り作品 顔も手書きだという


金田さんが連日徹夜して作ったおかんアートマップ これをみて大聖寺を歩きたい

杉:
これは自分自身の気づきになりますが、
こういうちょっとしたキッカケで地域の交流は生まれるんだなと実感したことです。

今回の展示会にあわせて、スギヤマ酒店では日本酒の試飲スペースを設けたんですが、
そこで知らない人同士が話したりしてる姿をみて、ちょっと感動してしまいました。


展示会中、スギヤマ酒店の前はカフェスペースとして開放

今回のように、この空き家を使いたい方がいれば大歓迎ですし、
その時にもまたスギヤマ酒店でカフェスペースを作ったりできれば最高です!


おかんアートに囲まれながら打ち上げを… !お疲れ様でした!

スギヤマ酒店

住所:石川県大聖寺山田町10-1

電話:0761-72-0462

メール:sake.sugiyama@gmail.com

サイトURL:http://sugiyama-sake.com/