土地もノウハウも持たない男が農業の世界に飛び込み”梨栽培”に人生をかけるまで

梨の名産地である石川県加賀市には、
収穫時期の7~10月になると一気に梨が店頭に並びます。

そんな加賀市の梨づくりを支える一人に、
人生をかけ、0から農業に飛び込んだ方がいました。

そんな彼の、新規就農にいたるまでの苦労と道のりを取材しました。

舟川賢介さん

25歳の時、農業の道を目指す。

各農園をアルバイトしながら、30歳で石川県加賀市の梨産地でもある
奥谷(おくのや)梨組合から新規就農できる園を紹介してもらい、独立し就農

現在、1ヘクタールにも及ぶ土地で約400本の梨を育て、
将来的には「梨農業の振興・文化継承」を目指して日々勉強中。

Q1 就農時の資金は?

奥谷の梨組合に入ったタイミングで、農林水産省が行っている
「青年就農給付金(経営開始型)」を利用しました。

青年就農給付金(経営開始型)・・・
原則として45歳未満で独立就農する方を対象に、
年間最大150万円、最長5年間の給付金が支払われる制度。

本格的に梨を始めて、成果を出せるようになるまで3年ほどかかりましたね
また、給付金の支給にも時間がかかったので、その間はアルバイトで生活費を稼いでました。


(古い枝と就農してから育成した枝の更新が終わり、数年間の努力が形になった瞬間)

Q2 土地や農機具の確保はどのようにしましたか?

土地については、先述の通り組合から声をかけてもらって
スタートしたので、自分で探すことなく就農する事ができました。

農機具についても、組合が選果場(収穫した梨を選定する場)や、
消毒の散布機を保有しているので、皆でシェアしあいながら使用してますね。

現在、奥谷の梨組合には24名ほどの生産者が所属しているのですが、
こういった所はチームでやるメリットだと感じています。


(選果場内の散布機)

Q3 農業のノウハウはどうやって学びましたか?

農業の道に進みたいと思った25歳の時に、米農家のアルバイトを始めました。
信用もなかったので、それは収穫時期のみの季節雇用でしたね。

生活はぎりぎりでしたが、それでも2年ほどは続け、
その後、働きを認めてもらい、梨・スイカ・大根を育てている
年間雇用の農園に転職する事が出来ました。

尊敬できる親方のもとでノウハウを吸収し、とにかく打ち込みました。

農業は信頼だな、と本当に思います。

その働きが親方からの信頼に繋がり、周りの生産者からも
「頑張っているやつがいる」と評価して貰えるようになりましたね。

Q4 アルバイトを辞めて、本格的に就農したきっかけは?

親方のいる農園に務めて3年ほど経った頃でしょうか。
ひとつ、大きな出来事として、
勤めていた農園の親方が亡くなった事があります。

親方からは、熟練の生産者さんを紹介してもらっていましたが、
そんな時に奥谷の梨組合の会長から「梨を本気でやらんか。」と
声を掛けていただきました。

Q5 今後の目標は?

とにかく経験を積んで、より丈夫で健康な梨を作り続けること。

少しでも化学肥料や農薬を減らし、強く良い梨木を育てるためには、
冬に行う”枝の剪定作業”の技術向上が不可欠です。

3~5年間、休まず実をつけてきた枝を適切に剪定することで、
一本一本の木の養分が不足したり過剰にならないようにコントロールします。

この作業をミスなく行うことで木が強くなり、
化学肥料等を減らし、最終的には梨栽培の新しい道が開けると思っています。

また、奥谷の梨組合に若手をどんどん入れて、文化継承に貢献していきたいですね。

Q6 目標達成に向け、具体的にはどんな事を?

梨組合は後継者不足が深刻な課題ですので、
自分の繋がりをいかして農業に興味がある人達に声をかけたり、
独立するまでのライフプランをアドバイスをしながら、若手の定着を図っています。

また、梨木自体も高齢樹が多いため、
健康な梨を生産し続けるために梨の苗を植える所から始めています。


(梨の苗 肥料の代わりにクローバーを育てる独自の育て方)

Q7 最後に、これから新規就農を検討している人に一言

自分が何年で独立したいと思っているのか、そのために何が必要なのか。
そこを逆算して取り組んでいくことが大切だと思います。