【福井県坂井市】豊かな自給農業を大家族で営む「なばたけ農場」

なばたけ農場

白山連峰を水源とする九頭竜川流域にひらけた福井・坂井平野にある”なばたけ農場”

見渡す限り田んぼの広がる坂井町は、はるか奈良朝の時代からの米どころである。

千年もの間、引き継がれてきた先人たちの米作りの叡智とたゆまぬ地道な努力・情熱を引き継ぎ、稲澤夫妻が誇りをもって励んでいる。

”なばたけ農場”のお米、大豆、小麦と野菜は、自家製の有機肥料を使って、農薬や化学肥料を一切使わずに育てられている。

生産者・稲澤ご夫妻

夫・宗一郎さん

大学中退後、農業の道を志す。農業者大学校卒業。

学生時代、埼玉県や和歌山県の農業家宅にて住みこみ研修をした際に、有機農業の思想技術と、自給農業の楽しさ、農的生活の豊かさを体験し、自分の目指す方向性が見える。

1999年の春に、生まれ育った坂井市で就農。今年で米作り19回目。

坂井市の自給農業先駆者である”おけら牧場”で当時行われていた、生き方を学ぶ”おけら塾”で妻のエリナさんと出会い結婚。

現在は3haの田んぼで水稲・大豆・小麦・自家用野菜の栽培を営むかたわら5人の子育てに奮闘中。

妻・エリナさん

千葉県船橋で育ち、高校時代に助産婦を目指す。

土の上よりコンクリートの上を歩くほうが圧倒的に多い日々を送っていた、幼少〜独身時代。

お産を学んでいくうちに、食事がからだに与える影響について知り、農業に興味をもつきっかけとなる。

結婚を機に福井県に。現在、農業を手伝う傍ら、本職はお産が好きな助産婦である。

5回の妊娠・出産体験、現役お母さんとして

”これでいいのかな” ”いいんだ、きっと” ”う〜ん” などと一歩一歩の毎日。

ちなみに第3子は、色々なことが重なり、車中で自分でとりあげるという貴重な体験に恵まれる。

田んぼに囲まれた環境、村の生活、家に畑がある生活…

外から来たからこそ見えるものを発信している。

Q1 ”なばたけ農場”の由来は?

私たちの住む福井県坂井市若宮は、40軒ほどのこじんまりとした集落です。

その中に同じ苗字のお宅が何軒もあり、それぞれが呼びわけるために、集落の中でいつのころからか屋号で呼びわける習慣が残っています。

うちの“稲澤”も3軒あり、私の家は”なばたけ”と呼ばれています。

村の中では「なばたけのあんちゃん!」、「なばたけの子か〜?」といった具合です。

米作りをするようになって数年、農場の名前をどうしようかとあれこれ考えていた時に思いついたのが、小さい頃から慣れ親しんだこの屋号でした。

”なばたけ”の由来はわからないのが残念ですが、きっと菜の花でいっぱいの田畑が広がっていたのではないかな?!と想いめぐらしています。

Q2 ”なばたけ農場”ならではのこだわり教えてください。

無農薬・無化学肥料は大前提で、米ぬか等をEM菌で発酵させた手作りの有機肥料をひかえめに利用して作物を育てています。

できたものに対するこだわりよりも、”どう育てていくか”という農作業の過程を大切にしています。

あまり欲張らず、量を求めない。

身の回りにあるものでよりよくなるように工夫を重ねていく。

例えば、除草剤を使わずに、でも手で草取りをする手間も省く方法はないか・・・?

これが、あるんです。工夫を重ねれば、辿り着きます。

”もっとたくさん!もっと大きく!”という欲に流されず、自分たちの”こう生きる”という信念の通りにやっていくだけ。

できた農作物の質はあとからついてきます。

結果的に沢山の方に”とっても美味しい”と言ってもらえるのは、素直に嬉しいです。

Q3 子沢山に、WWOOFの受け入れ。大家族での暮らしはいかがですか?

賑やかですね。

大家族はもちろん大変な時もありますが、とにかく家中が明るくて楽しい!

WWOOFは受け入れを始めて10年が経ち、これまで世界中から沢山の人が手伝いにきてくれました。

WWOOFジャパン

World Wide Opportunities on Organic Farms

「世界に広がる有機農場での機会」の頭文字です。

有機農業、無農薬、無化学肥料などを実践する農家であるホストと、日本全国・世界各国のウーファーをつないでいます。WWOOFのサイトを通し様々な人と友達になり、その関係性を深化させ、オーガニック生活を知り、新しい知見を得て、価値観の多様性を感じ、自分を向上させていくものです。家族のような気持ちで、何をしたら相手が喜んでくれるかをお互いが念頭に置きながら一緒に短い間生活します。
ホストとウーファーはお金のやり取りはしません。「食事・宿泊場所」と「力」そして「知識・経験」を交換します。

WWOOFは農作業の手伝いだけじゃなく、家族として子守もしてくれます。

こどもたちが色んな国の人、色んな仕事の人とふれ合うことで、仕事を選ぶときの幅が広がるといいなと考えています。

うちへ滞在中に一度は食事も作ってもらって、異国の料理に出会う感激を大家族みんなで味わったりもしていますよ。

Q4 ”なばたけ”を沢山の人に知ってもらうために、どんな活動をされていますか?

農家が教える味噌づくり教室はおかげさまで大人気の企画です。

”なばたけ”のお米を酒蔵さんに加工してもらった麹と、”なばたけ”の大豆で仕込みます。

教室をやりはじめて5年目、現在は公民館やカフェへの出張味噌づくりの要望も増え、ワンシーズンにこなす回数も増えてきました。

農作物や加工品を携えて、イベント出店もすることがあります。

地元のおまつりや、最近では京都のファーマーズマーケットにも縁があり、直接買い物する人と対面して販売する喜びを感じています。

”なばたけ”はインターネット販売は一切しません。クチコミが主。

イベントへのお誘いや、卸売りも、友が友を呼ぶような形で、あちらから話がくるようになりました。

特に麦茶は、”子育て中のお母さんでも使いやすい”を意識して開発しました。

Q6 最後に、どんな人たちに食べてもらいたいですか?

食べてもらう人を選ぶ、とは思わなくなりました。

それこそ就農した当初は子育て中の人にターゲットを絞って促販していたこともありました。

どんな人でも、縁があって口にした時に、こじんまりとした農家のことを思ってもらえると幸いです。

自分たちの栽培したものを楽しみながら豊かに暮らす”自給”の素晴らしさを感じて、少しでも生活に取り入れる人が増えたら嬉しいですね。

【なばたけ農場】
住所:福井県坂井市坂井町若宮43-12
TEL & FAX:0776-68-1951
WEB: http://nabatake-farm.jp/blog/

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TEXT BY

どうした

大阪府出身。世界の田舎を旅する中で夫と出会い、結婚。その後、夫の地元である石川県加賀市へ移住。平飼い養鶏「山ん中たまご園」を夫婦で経営する傍ら、二児のママでもある。「作り手の顔が見える食」の提供・浸透にも注力し、地物を伝えるイベントの開催など、地域に根付く情報発信を積極的に行う。