石川県加賀市には、給食で出た米油の廃油を利用し、
環境と福祉を考えた優しいせっけん作りをしている方がいます。
そうたのせっけん
石川県加賀市で製造販売を行う手作りの無添加せっけん。
原料に地元小学校の給食で使われた廃油をベースとし、
無農薬の”米ぬか”を混ぜ合わせた「米ぬかせっけん」や、
「よもぎせっけん」「加賀ぶどうせっけん」など、地元に因んだ様々なせっけんを生産。
「そうたのせっけん」がスタートしたのは2006年の頃。
「将来は障害者や高齢者と一緒にせっけんを作りたい」という目標の通り、
日中は福祉や介護の仕事に携わる一方、ライフワークとしてせっけんを作り続けている。
上出壮太さん
1982年生まれ。石川県加賀市出身。
高校卒業後、兵庫に移住し関西福祉大学に進学。
大学三年生の時に、ニュースなどで騒がれる環境問題に危機感を抱き、
自分でも何かできないかと調べた際に「廃油せっけん」の存在を知る。
その後、【せっけんと福祉】は全国でも障害者雇用の事業として扱われるなど、
その相性の良さを知り、自身も”環境と福祉”に寄り添った「そうたのせっけん」をスタート。
現在は障害者支援施設で務める傍ら、
加賀市で使われた廃油や地物素材を利用したせっけん作りを行なう。
ー テーマである「福祉と環境」について教えてください。
僕が大学生の頃、環境運動が盛んに行われ、自分も興味を持つようになりました。
セヴァン・スズキさんという、わずか12歳の少女が、
ブラジルで開かれた環境サミットでのスピーチが話題になったり…。
そんな背景を受けて、自分でも何か出来ないかと思い出会ったのが”廃油せっけん”でした。
そしてこの廃油せっけんとの出会いは、長野の福祉事業所「ねば塾」との出会いに繋がります。
ねば塾・・・
心身にハンデを抱える障害者と共に働く場所として、長野県佐久市で立ち上がった福祉事業所。主に石鹸の製造を生業としており、「障害者が作った物だから」と甘えを持たずに、市場に通用する商品を目指し製造を続ける。
ー ねば塾との出会いを詳しく教えてください。
ねば塾の石鹸づくりは、「手仕事」を大切にしていて、
高齢者でも障害者でもみんな同じように作業し製造しているんです。
また通常、福祉事業所で働く障害者の方々は低賃金で雇われていることも多いんですが、
ねば塾ではちゃんと自立して暮らしていけるような給料を支払う仕組みが作られています。
そんなところにすごく感動して、大学四年生の時にねば塾に1ヶ月間滞在し、
住み込みで石鹸作りの基本から体制面など勉強させてもらいました。
このねば塾でやっていることを、自分も加賀でやりたいなと思ったのが始まりですね。
「加賀ぶどうせっけん」「女子せっけん」「男子せっけん」など、
今ではオリジナリティあふれる石鹸もたくさん開発している上出さん
ー そうたのせっけんは、今どんな状況なんでしょうか?
今はまだ一人で活動していることの方が多いんですが、
以前、精神科に通われていたおばちゃんと一緒に作業していた時には、
おばちゃんから「普段飲んでいる薬が減ったよ」と言ってもらえました。
そんな存在になれたことが嬉しくって、もっとこういう機会を増やしていきたいんですが、
今は人手が必要な時とそうでない時の差が大きいので、
もっと沢山の人に認知してもらって、もっと忙しくなってほしいですね(笑)
巡り巡って障害者や高齢者の方のやりがいに繋げていきたいです。
石鹸をカットする時にはどうしても人手がいるという
ー 販売先はイベント出店が主なんでしょうか。
そうですね。
地域のイベントに年3回〜5回は出店しています。
あとはインターネットでも販売しています。
最近になって、県外の会社から100個以上の卸の依頼をいただいたり、
手作り石鹸についての製造相談をいただいたりしているので、
少しずつ良い流れが生まれつつあるんじゃないかな…。そうだと良いです(笑)。
いろんなイベントに参加している様子
ー 今抱えている課題はありますか?
一番困っているのは、「廃油の確保」です。
今までは地元小学校の給食で使われた米油の廃油を使用していたのですが、
野菜の高騰により、米油を使わなくなってしまったんです。
他の油でも試しましたが、なかなか満足いく出来栄えにならず。
今は一旦製造を中止しています。
もしこの記事をご覧いただいた方で、
米油の廃油についてご存知の方がいたら是非ご連絡いただきたいです。
人気のよもぎせっけん。廃油の確保ができず今は製造をストップさせているという。
ー 今後の目標を教えてください。
うちの石鹸をいつも買ってくださる方で、
アトピー持ちのお子さんがいらっしゃる方がいます。
いつも皮膚科に通われているそうなんですが、
「そうたのせっけんに変えてから皮膚科行ってないよ」と言われた時には
本当に嬉しくって、続けてきて良かったなと思いました。
そんな子供達を増やせればいいなと思いますし、
製造面についても、いつかちゃんと雇用できる体制になって、
それが障害者や高齢者の方のやりがいに繋がるように続けていきたいです。
それこそが本当の【環境と福祉のそうたのせっけん】なんだと思っています。
知り合いの絵本作家に描いてもらったという似顔絵 いつもイベントの際は飾ってある
住所;石川県加賀市新保町カ11−2
電話:090−1391−3028
ブログ:http://air.ap.teacup.com/spiritualsky/
オンラインショップ:http://soutasekken.thebase.in/