嫌いだったはずの地元が自分を癒してくれた。フリーランス美容師が10年ぶりに石川に帰ってきて思ったこと。

ー 加賀ぐらしの取材でいうのもあれなんですけど、本当は石川が嫌いだったんです・・・。
実は、もう帰ってこないかなって思って出ていったんですよね。

そう話すのは、2016年に加賀市にUターン移住した甲斐大介さん。
加賀市ではまだまだ珍しいフリーランスの美容師をされています。

地元を遠ざけていた彼が、どうして今戻ってきたのか。
10年ぶりに石川県に帰ってきて思うこと、感じることをお話ししていただきました。

フリーランス美容師 甲斐大介さん

石川県加賀市出身。高校卒業後、愛知県名古屋市の美容専門学校に進学。

卒業後は名古屋の美容室に就職し、サロンワークをベースにしながらメジャーバンドのヘアメイクやヘアショーへの出演など、10年にわたり様々な活動に尽力。美容ディーラーが学生を対象に実施した「東海三県好きな美容師アンケート」で第四位に選ばれるなど輝かしい経歴も。

2016年に加賀へUターン移住し、フリーランス美容師として早朝・深夜営業を受け付けるなど、地方における新しい美容師の在り方を模索・提案中。

甲斐大介さん

instagram:https://www.instagram.com/daisuke.kai/?hl=ja

ヘアカタログ:https://hair.cm/stylist-daisuke.kai/

ー 地元が嫌いだったという甲斐さんですが、どんな少年期を過ごしてたんですか?

あんまり良い思い出がなくて、まず中学生の時にいじめが理由で転校してるんです。
それまでは家から一番近い学校に行ってたけど、中二で隣町の中学校に移って。

僕はセクシャルマイノリティなんですが、当時は隠していたし、それが原因で勘違いされたり、クラスメイトとうまくいかないこともあったのかもしれません。
男女を分けたがる学校のシステムあんまり好きじゃなかったんです…。

でも中学を卒業した後も「制服はまだ着たい!」って思ってて!
マインドがギャルだから(笑)。それで自分でも入れそうな高校を探して進学したんです。

ー 美容師になろうと思ったのはいつ頃ですか?

高校生のときに学校でショックなことが起きて、すごい落ち込んでたんだけど、たまたま髪を切るタイミングだったから美容室に行ったんです。

その時は 自分が落ち込んでる話とか別に美容師さんにしなかったんだけど、髪を切って家に帰ってきたら、気持ちがすごく軽くなってることに気づいたの!

それで「え〜!」ってなって!なんか髪を切るってすごいパワーがあるのかもって漠然と感じたし、あと僕のおばあちゃんが根拠もなく「だいちゃんは手先も器用だし美容師になりね〜」とかよく言ってたことを思い出したり、ずっと仲良かった友達の夢が美容師になることだったりして、そういうのが重なって バチン!ってきた

ー 学校では美容師という進路をどう受け止められていたんですか?

超異端だったかも(笑)!

通ってたのが農業系に強い高校だったから、先生に「美容師になりたい」って言ったら「そんな資料、うちの学校にはないぞ」って言われて、自分で頑張って資料集めたり

進学先は金沢か名古屋のどっちかで考えてたんだけど、名古屋の美容学校を見学した時に、先輩たちの髪色がカラフルで格好良くて、ファッションも当時めちゃくちゃ流行ってたヴィヴィアンとかギャルソンとか着てて、そんな人たちをこれまで地元で見たことなかったから、もうね〜自分の中に風が吹いたの!ブワーって!そんで名古屋に出ようって決めたんです。

ー そのまま就職も名古屋で。どうでしたか?

実は就職活動がうまくいかなくて、だから採用してくれたお店にはすごい恩を感じてます。
入社したときから、10年間は絶対このお店で頑張ろうって決めてたくらいで。

周りと比べると遅咲きだったんだけど、有難いことに8年目くらいから少しずつ忙しくなってきて、だんだん休みの日も仕事したり、サロンワークも一生懸命頑張ってたし、撮影とかでもヘアメイク呼ばれることが増えてきて、最後の方は本当に休みも全くない状態が続いてて。

忙しくて、本当にすっごい忙しくて身体もきついのに、自分は充実してるんだって思ってて。
そうやって自分を追い込んで、最終的には心も身体も壊してしまったんです。

ー 限界を超えてしまった感じでしょうか。
加賀に戻ってきた理由ともつながりますか?

その頃にはまともな食事をする余裕もなくて、周りからも「すごい痩せたけど大丈夫?」って聞かれてたけど「全然平気〜!」って答えてました。

自分のなかで疲れてるけど、やりたいことがやれてるし、好きな仕事だし、友達もいるし、絶対絶対大丈夫って、今思うと自分の限界を無視して無理やりマインドコントロールしてた感じ。

それからも休み休み続けてたけど、一向によくならなくて。
アクセル踏みすぎて、戻せなくなっちゃってたから、一回加賀に戻ることにしたんです。

ー 10年ぶりの加賀について、教えてください。

まずは体調が一気によくなりました!
子供の頃の思い出も相まって、戻ってくるつもりは全然なかったけど、食べるものとか環境でこんなに人間って変わるんだって超感じました。当たり前だけど、大事なことだよね。

あとは田舎の暖かさもすっごく感じました!
親ももちろんだけど、自分のことを小さい時から知ってる近所の人も「おお!帰ってきたんか〜!」と受け入れてくれたんです。

初めて自分に戻る場所があってよかったなって思いましたね。

戻ってきてもうすぐ丸二年。正直言うとまだまだやりたいことも沢山あるし、もっと色んな人と出会いたいから、今は次のステップに向けての準備期間みたいな感じです。

ー 今はどんな活動をしていますか?

フリーランスならではのサービスとして「営業時間とおやすみ」は逆に決めてません
めっちゃ朝早い時間でも、夜0時でも空いてたらOKにしてます。仕事帰りに髪を切りたい人とか、絶対この日に間に合わせたいって人がいたら気軽に連絡欲しいです!

特定のサロンに所属していないので、ヘアモデルの撮影とか、ウェディングの出張ヘアメイクとかもしています。どこかに所属してると、その美容室内でしか組めないんだけど、フリーランスにはそういった制約もないので、他の美容師さんとのコラボ撮影も積極的にやってます!

髪の毛に限らず、例えばアクセサリー作家さんと組んで、ピアスを印象的に見せるヘアメイクコラボとかも今後はどんどんやっていきたいな!超よくない〜!?

あとはいつかヘアメイクのデモンストレーションとかもやってみたいなって思ってるんです。

よくイベントでワンコインヘアアレンジとかで呼んでいただくことが増えたけど、それのライブバージョンとして、モデルさんを呼んで、メイクやヘアスタイリングのコツを伝えられたら良いなって。

ー 最後に、加賀はどんな場所だと思いますか?

人が少ないとかそういうハードルはあるし、自分もまだまだ模索中だけど、そのぶん人と人とが繋がりやすいし、ファンになってくれたらずっと応援してくれたりして、そういう意味ではいろんなことにチャレンジしやすい場所なんじゃないんかなって思ってます。

あんなに嫌いだった地元だけど、この場所があったからリセットできた自分がいるから。
今では地元の良さもちゃんと感じています。てへへ(笑)

これから、若い子はもちろんだけど、いろんな人たちがこの場所に集まって、ごっちゃごっちゃに楽しくやれたら超超最高だよね!

甲斐大介さん

instagram:https://www.instagram.com/daisuke.kai/?hl=ja

ヘアカタログ:https://hair.cm/stylist-daisuke.kai/

電話:09028314101

間借り美容室:boGa(ボガ)

住所:石川県加賀市潮津町リ-6

ご案内
本記事は、加賀市の人口減少対策室と共同で取材・作成をした記事になります。加賀市は、南加賀唯一の消滅可能性都市に含まれており、少子化という喫緊の課題を抱えていることは否定できません。そんななか、マイナスを受け止め前向きに地域で活躍する人たちのパワフルさや、自らの力でマイナスをプラスに変えていくしなやかさを、加賀ぐらしを通じて色んな人に伝えたいと思い企画いたしました。この記事を通じて、加賀の1ピースが伝われば幸いです。