子ども達の生きづらさに寄り添った彼女が作りたい、多様な人が交じり合う場所とは。

石川県加賀市山代温泉にオープンして2年目。

イベントやワークショップ、地元人気店とのコラボカフェなど
さまざまなチャレンジを応援するカフェがあります。

この店には、「ますくん」の愛称で地域の人から愛される、
移住してきたばかりの女性がいます。

彼女が、子どもに店内を無料開放するプロジェクトを始めたと聞いて、
さっそくお話を伺ってきました!

Local Community Cafeコドン

山代温泉の総湯から温泉通りを歩いて3分。「Local Community Cafe コドン」は、どこに居てもやわらかな光を感じられる開放的な雰囲気のお店です。カフェメニューは季節ごとに変わり、加賀の和紅茶や地元人気店とのコラボメニューも楽しむことができます。

またイベントスペースとしての利用も多く、「ココペリ珈琲コラボカフェ」「茶図のSDGs量り売りマルシェ」「ARABIKIと工藝」など、毎月さまざまなポップアップショップが出現。
加賀の良いモノや誰かの「やってみたい!」を応援する場所として、カフェに留まらない活動を展開しています。

小杉真澄さん

新潟県出身。大学入学と同時に上京。大学卒業後、低所得家庭の子ども達に向けた教育支援事業を行うNPO法人に就職。様々な事情で学校に行けなくなった高校生に勉強を教える無料塾を立ち上げ、学習支援や居場所づくりに取り組まれてきました。

2019年3月より、新しいチャレンジをするべく石川県加賀市へ移住。
現在は山代温泉にある「Local Community Cafeコドン」を運営しながら、自身も学校が苦手だった経験を活かして、9月より高校生以下の子どものためのサードプレイス「こどもコドン(仮)」をスタートさせています。

-小杉さんと子どもとの関わりは、どのように始まったのですか?

ご縁があって、子どもの学習支援をするNPOに入ったのがきっかけです。学校に行きづらくなったり、家庭環境が理由で高校を中退した子ども達が、編入試験や高卒認定に向けた勉強をしたいとき、それをサポートできる場として無料の学習塾を立ち上げました。

私は勉強を教えたりもしていたけれど、「先生」という立場ではなくて、そこではただの大人。話をしに来るだけの子もいたし、一緒にご飯を作って食べたりもして、子ども達と色んな時間を過ごしました。

振り返ってみると、私自身も学校があまり好きではなかったんですよね。理不尽なルールとか多くて(笑)。そんな時に自分を救ってくれたのは、学校以外の第3の場所だった。この塾も、学習支援という側面だけでなく、何か困ったことがあったときに駆け込める場所、行ったらなんとかなる場所でありたいと思っていました。

塾で料理の作り方を覚える子どももいたとか。子ども達にとって、
学校でも家でもない、大切な居場所となっていた。(参照:NPO法人キッズドア

-加賀に移住しようと思ったのはなぜですか?

学習支援をしていく中で、学力がついたあとの「次の一手」が、どうしても必要だと思ったからです。

もちろん、勉強した結果、編入したり資格を取れたりした子もいて、それはとても嬉しかったんです。でも、学力が身についてもお金がなくて進学できないとか、一般企業に就職しようとしても続かず辞めてしまう子ども達をたくさん見てきて、「大学や専門学校に行って一般企業に就く、という以外の道をどこかで作らなければ」という想いが強くなっていきました。

東京での生き方しか知らず、そこにうまくはまることができなくて苦しさを感じている子ども達に、「それ以外の場所や生き方もあるんだよ」というのを示したかった。そのためには、まず先陣きって私が移住して、その導線を作ろうと思ったんです。

NPO時代に立ち上げた居場所型学習塾。(参照:NPO法人キッズドア

-実際、加賀に移住してみてどうですか?

生き方のグラデーションが豊かで、なだらかだなと感じました。
もちろん、東京の方が人も多いし、多様だというのはあると思いますけど、加賀市は人口が少ない分、おもしろいことをしている人が目立つんですよね。そして身近に思える。活躍されている方と知り合いになろうと思えば、それは東京よりずっと簡単にできるように感じます。

色んな生き方があることを知識で知るだけ、というのと、実際に自分の近くにそういう大人がいて、関われる環境にある、というのは、やっぱり違いますよね。私自身も、カッコイイと思える人達が身近にいることで、学歴だけじゃない軸で努力しないと!って、励みになっています。

地元人気店「ココペリコーヒー」さんとのイベント「コラボカフェ夜の部」での1枚。
小杉さん自ら加賀のオモシロイ大人との繋がりを広げている。

それから良い意味で、加賀には「お節介をやいてくれる人」がいる。温泉に行けば初対面の人から話しかけられたりするし、お店におじちゃんが栗を持ってきてくれたりもしました(笑)。

東京は孤独に耐えられる人はいい。自分で考えて、一人でも動き出せるような人はいいんです。でも誰かに励ましてもらって、背中を押してもらって、いっぱい世話を焼いてもらって、やっと外の世界に一歩出てみようかな、という人にはしんどかったりもします。

そんな時、「おはよう」とか「あんたご飯ちゃんと食べてるんか」と話しかけてくれるこの町は、とても温かいなぁと感じます。声をかけられることで、「自分を知ってくれている人がいるんだ」って思えるんですよね。自分の存在を認めてくれている人がいる、というのは、そこで生きていく上でとても大切なことだと思います。

(左)毎週金曜日にコドンに入荷するオーガニック野菜。そのリーズナブルな価格も、加賀に来て驚いたことの一つだとか。
(右)近所のおじいちゃんがポケットに入れて持ってきてくれた栗。

-最近、加賀の子ども達に向けて始められた活動についても教えてください。

加賀・山代の子ども達ともハッピーに過ごしたい、そのために自分にできることは?と考えたときに、「子ども達のサードプレイスをここに作りたい」と思いました。

高校生以下の子どもは、営業時間中ならいつでも無料でコドンを自習室として使っていただけます。学校に行きたくないからちょっと寄ってみようとか、単純に私やここに来るユニークな大人とのおしゃべりを楽しみに来てくれてもいいです。

普段自分がいるコミュニティでの肩書きとかキャラクターを脱ぎ捨てて、本音をさらけ出せる場所。それをここに作りたいんです。

山代温泉で毎年6月に開かれる菖蒲湯まつりでは、お店を休憩所として
子ども達に開放。たくさんの子どもがリラックスして過ごす姿が見られた。

-今後チャレンジしたいことは?

食事が持つ力が大きいことは前職で実感しているので、「コミュニティ食堂コドン(仮)」を計画しています。あとは本音がこぼれる場所ということで、実はコドンのカウンターを利用した「スナック真澄」も考えているんですよ(笑)。ゆくゆくはそのカウンターに、東京から招待した若者たちに立ってもらいたい!

東京とか加賀とか、大人とか子どもとか関係なく、カウンターを挟んで、多様な人間と会話できる空間。そういうところって、何かおもしろいことが起きそうじゃないですか。

そして今後はとにかく、ここを色んな方に使ってもらうことで、この店での主役をたくさん作っていきたいです。別にイベントやお店をするとか大層なことじゃなくても、お友達同士で集まってお弁当を食べたいとか、趣味の集まりに使いたいとか、そんな気軽な感じの利用でもいいんです。高尚な理由なんてなくていいので、「場所を貸してほしい」とか「こんなことしてみたいんやけど」とか、気軽に声をかけて頂きたいなと思います。

普段過ごしている枠組みからちょっと離れられる場所、様々な人が入り交じって過ごせる場所に、ここが育っていけたら嬉しいです。そしてそんな場所を、実は私が一番欲しいなと思っています。

Local Community Cafe コドン

住所:石川県加賀市山代温泉温泉通24

営業時間:11:30~19:00(L.O.18:30) 不定休

Facebook:https://www.facebook.com/YamashiroCodon/

Instagram:https://www.instagram.com/yamashiro.codon/

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TEXT BY

higashino

2007年加賀市に移住。普段はパートをしながら、カフェやこども食堂で絵本の読み聞かせ会「絵本の中の小さなお茶会」を開く日々。人とじっくり話がしたくて読書会を企画することもあるが、実は本のことはあまり詳しくない。人見知りだけど飛び込み力はある2児の母。