この町に戻ろう。Uターンして、「かわいい」和菓子屋の五代目となった彼女の想いとは。

こんにちは!山田(@konya_ga_yamada)です。

石川県加賀市にある山中温泉を知っていますか?

2016年には温泉総選挙で女子旅部門第2位に選ばれるなど、若者にも人気の温泉スポットです。

山海堂(さんかいどう)は、そんな山中温泉の入り口に位置する老舗の和菓子屋さん。
今回は、五代目を継ぐ黒田麻実さんに取材してきました。

御菓子調進所 山海堂

創業はさかのぼること明治38年(1905年)。

1300年の歴史をもつ山中温泉の入り口にある同店では、
「出会い、出し合い、分かち合い、そこに創造がある」をコンセプトに、
“たべもの”という枠を超えて五感で感じることが出来る和菓子が数多く並びます。

また山海堂を代表する「そっとひらくと」シリーズでは、
もなかの中に可愛らしい季節の御干菓子と占いの御札が籠められており、
その斬新な切り口が各地で高く評価され「The Wonder 500™」にも認定されました。

The Wonder 500™

The Wonder 500™は、クールジャパン政策のもと“世界にまだ知られていない、日本が誇るべきすぐれた地方産品”を発掘し海外に広く伝えていくプロジェクト。日本を代表する30人のプロデューサーによる“目利き”と、一般公募によって、全国47都道府県より合計500商材が選ばれている。

参考:https://thewonder500.com/

五代目・黒田麻実さん

石川県加賀市 山中温泉生まれ。
高校卒業後、大学への進学をきっかけに大阪府へ住所を移す。

大学に入学した当時は家業を継ぐことを意識していなかったものの、
卒業を控えて「いつかは地元に帰ろう」という気持ちに

当時、大学では文学を学んでいたため、和菓子に関する知識はない状態。
就職活動の際に一念発起し奈良県の和菓子屋に弟子入りすることを決断

3年間の修行の後、「もっといろんな事を経験してから帰りたい」という思いが膨らみ、
東京でIT関連の会社に就職するなど和菓子から離れた業界での仕事も経験。

そして自身が27歳の時に、ワーキングホリデーの制度を利用しカナダへ。
現地のカフェやジェラートなど”食”を扱うお店で働きながら28歳の時に加賀にUターン移住。

ー 大学卒業後に奈良県の和菓子屋へ弟子入り。大変なことも多かったのではないでしょうか?

大学に進学する時は、特に家業を継ぐとかは考えていなくて、
とにかく一度外の世界を見てみたいなという気持ちでした。

この山中温泉が嫌になった訳ではなかったので、
四年間の大学生活を終えて、将来を現実的に考えたときに、
後継が決まっていない家業を思い、自分が継ぐのも良いかなと考えるようになったんです。

ただ、そこからが大変でした!(笑)
就職活動を経て、奈良県の和菓子屋に職人として弟子入りさせていただいたのですが、
私は調理師学校を出ている訳でもないので、毎日がとにかく勉強の日々でしたね。

そのお陰で、技術はもちろんですが、人への気遣いや段取りも意識するようになったのは
大きな財産だと思っていますし、あの時頑張って食らいついてよかったなと思っています。


細かい御干菓子を丁寧に作り上げていく。一日2000個ほど作る日もあるそう。

ー 留学を終えて28歳でUターン移住をした時の心境を教えてください。

最初は生まれ育った山中温泉に戻ってきたことが嬉しかったですし、充実していました。
ただ徐々に現実と理想のギャップが見えてきて、ちょっと辛かった時期もありますね。

よく言われることかもしれませんが、都会と比べて田舎は繋がりが濃い場所ですので、
自分の置かれてる状況を気にしすぎてしまったりすることがあったんです。

そんな時に癒してくれたのが、小さい頃から通っていた温泉です。
お店から歩いて2分のところに山中温泉の総湯( =共同浴場)があるんですが、
子どもの時からずっと変わらない温泉の存在が本当に自分の支えになっていました。

Uターンして3年目になりますが、今では生活リズムも自分なりに整ってきて、
仕事とプライベートを切り替えながら楽しく過ごせています。


山中温泉のシンボルでもある総湯

ー Uターンして、山海堂は何か変わりましたか?

「かわいい」という感覚を凄く大切にするようになりました!

これは父に指摘されたんですが、母と私は「これかわいい〜!」が口癖なんです(笑)

私がUターンしてから、母と二人で楽しそうに”かわいい談義”している姿をみて、
父が「”かわいい”が持っているパワーって凄いんだな」と実感したみたいで
それから山海堂でも”かわいい”という感覚を意識するようになりました。

例えば、山海堂の紙袋は地元の女性デザイナーさんに手掛けていただいたものもあります。
和菓子屋ではあまり見ないような色使いとちょっとポップな紙袋は大変好評でした!

ー 「そっとひらくと」シリーズも凄く可愛いです!

このシリーズも色んなところで取り上げてもらっています。

この商品は、私のために父が考えてくれたお菓子なんです。

Uターンしたばかりの頃、まだ技術が足りない私でも作れるお菓子をと、
生菓子ではなく御干菓子で構成された商品を考えてくれました。

それがこの「そっとひらくと」です。

私にとっても思い出深いこの商品が「The Wonder 500™」に認定していただいたり、
日本おみやげグランプリ2015の準グランプリとして評価をいただいたことは凄く嬉しいです。

今後、この「そっとひらくと」を使ったワークショップなども開きたいなと思っています。
色々なところで更に愛されるお菓子にしていきたいですね!


山中温泉の伝統工芸・山中漆器とコラボした「福涌」

ー なにか地域の活動に取り組んでいることはありますか?

最近、今までよりも深く地域と関わるようになったと思います。

山中温泉では、業種を超えた若手経営者が集まって新しい取り組みを考える会が
定期的に開催されているんですが、私もそのメンバーとして参加させてもらっています。

「山中温泉をどうしていきたいか」を話し合う機会が増えた事をきっかけに、
お店だけでなく地域の未来についても考えていかないといけないなと思っています。

また、観光客の方にお菓子づくりを体験するプログラムも単発で行なっています。
外国人の方が参加してくださることもあり、喜ぶ姿をみると凄く嬉しいですね。

ー これからチャレンジしたい事を教えてください!

家族でやっている和菓子屋なので、大量生産して沢山売って、という事は考えていません。
手しごとを分かってくださるファンをじわじわと掴んでいきたいなと思っています!

そのためには、お店の雰囲気ももっと居心地よくしていきたいです。
「山海堂に行きたいから、加賀市にきたよ」と言ってもらえるような場所になれたら。

お菓子自体のアイデアももっと形にしていきたいです!

今も時々「和菓子ケーキ」を作ったりと新しい事にトライしているのですが、
洋菓子に含まれる卵や小麦粉がアレルギーの方でも安心して食べられるような、
そんな新しい和菓子を作っていきたいですね。

御菓子調進所 山海堂

住所:石川県加賀市山中温泉湯の本町ク-8

電話:0761-78-1188

営業時間:9時~18時

定休日:毎週火曜日

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