【石川県加賀市】55年続く”十万石まつり”から地域の未来を描く男たち。

石川県加賀市には様々なお祭りが存在しますが、
かつて城下町として栄えた大聖寺(だいしょうじ)というエリアには、
55年にも渡って人々を楽しませ続ける十万石まつりがあります。

今回は、影で十万石まつりを支える実行委員を取材していきました。

加賀大聖寺 十万石まつり

十万石まつりの歴史は長く、1962年に商店街のお祭りとしてスタートし、
現在はかつて十万石を統べた大聖寺藩(だいしょうじはん)の歴史や文化を偲び、
地域の人が未来の産業の”発展と振興”を祈る大きなお祭りとなった。

この十万石まつりには珍しい習わしがあり、固定の実行委員は存在せずに、
毎年43歳を迎える地域の同年がその年の実行委員となり、1から企画していく。

55年もの長きに渡り、地域の人に愛され続ける十万石まつりの裏には、
関わる人・集まる知恵・その年の思いを毎年更新していきながら、
自分を育てた地域への恩返しとして集まった新たなメンバーにより、今年も開催される。

2017年9月9日(土)〜10日(日)10時〜21時

開催場所:石川県加賀市役所 周辺

/お祭りが開催される石川県加賀市の大聖寺についてはこちら/
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2017年度 実行委員長 大和広拓さん

石川県加賀市出身。
大学進学を機に大阪へ住所を移し、そのまま大阪で就職。

26歳のとき、家業を継ぐために加賀市へUターン。

家業である機械工具の専務として市の産業発展に貢献する一方で、
2017年度十万石まつりの実行委員長として代表を務める。

Q1 毎年変わる実行委員、大変さはありましたか?

その年によって色々カラーがあるので一概には言えませんが、
僕たちの場合には、「まず誰が委員をやるか」という所がなかなか決まらず、
「虎兎乃会(※)ではもう無理や」と言われることもありました。

虎兎乃会(ことのかい)…
十万石まつりでは、実行委員会を務める同年たちグループを総称し、
干支にちなんだ”会名”が付けられている。
2017年度は昭和49年-50年生まれの寅年と卯年が集まり「虎兎乃会」が結成された。

ただ、腹を決めて「やる!」という人が一人出てきてからは早かったです。

最初は三人程度で発足したグループでしたが、人が人を呼んでいって、
今では100人を超えるメンバーが関わってくれています。


赤のはっぴが「虎兎乃会」。虎と兎が描かれている。

Q2 地域の人たちにとって十万石まつりはどんな存在ですか?

子供の時から十万石まつりに参加してきましたので、
それこそ「在るべきもの」じゃないでしょうか。

ただ、十万石まつりは毎年実行委員が変わる習わしがありますので、
僕たちの代は「今年の十万石まつりにはどんな意味を持たせるか」というのを
最初に皆で話し合うところから始めましたね。

そして出た答えが、”来て・見て・やって楽しい十万石まつり”です。

地域の方やお店からお金を集めて行う皆のためのお祭りなんだから、
「子供から大人まで集まって交流できるようなお祭りにしたい」という風に決めました。


2017年の十万石まつりポスター、テーマである”楽”の文字も。

Q3 具体的にはどんなプランを?

二日間に渡り開催される十万石まつりでは、
ステージや広場を利用して様々な催しが開催されます。

例年、金沢や市外からご当地アイドルを呼んだりしていたのですが、
今年からは全て加賀市内の方達にお願いする予定です。

加賀市の人が踊るよさこい音頭や、住民参加のカラオケ大会もありますし、
自分たちも楽しめるような催しを考えています。

お祭りに来てくれる人たちが「◯◯のお子さんだ!」とか、
「△△のお姉ちゃんだ!」とか知っている人が頑張っている姿を見ることで、
思い出に残るお祭りになるんじゃないかな、と思っています。


十万石まつりの本部で繰り返しミーティングが行われる

Q4 今年は地元の高校生もボランティアで参加するとか。

そうなんです。

地元の高校生も、将来この十万石まつりを受け継いでいく存在になりますので、
愛着を持ってくれたらという思いで、加賀市内の高校にお声掛けしました。

最終的には50人もの生徒が当日手伝ってくれる予定です。

例えば放送部に入っている生徒は、アナウンスのお手伝い等もしてもらう予定です。
当日は北陸放送の方々がメインで進行してくださるんですが、
プロの仕事を身近で感じられる貴重な体験をしてもらえると思います。


メインイベントの一つである”万灯みこし”

Q5 55年目を迎えるお祭り。変わらない部分はありますか?

…意地やね!(笑)

毎年実行委員が変わるというのは、口で言うよりずっと難しいことで、
それこそ資料集めから始まって、先人たちがどんな思いで開催してきたかとか、
そういったものを全て1から受け止めいく必要があるんです。

その上で、今年はどういうお祭りにしたいかを同年と考えながら、
試行錯誤して作り上げていく、、、こんな大規模なお祭りがずっと続いてこれたのは、
子供の頃から自分を育ててくれた地域への感謝がなければ出来ないと思う。

自分たちも、子供の頃から行ってたこのお祭りを守りたいという意地で、
いま皆で協力しながら準備に奔走してます。


取材に協力してくれた実行委員3名 左:田中さん 中央:大和さん 右:北出さん(もちろん皆さん同級生)
メインイベント”古九谷大皿みこし”で使われるお皿の前で。なんと2.5トン。

Q6 十万石まつりに掛ける意気込みを教えてください。

まわりまわって落ち着くところが地元愛なんだと思います。

石川から離れた時は、加賀に戻るなんてあまり考えてなかったですけど、
年をとって地元への愛や感謝が育まれてきました。

今も県外で暮らしている人でも、このお祭りのために帰って来る人が沢山います。

10年以上会ってない同級生でも、祭りで再会したら、
不思議とこれまで空いていた距離が一気に近づいて子供の頃の自分たちに戻れるような。。
十万石まつりはそんなお祭りです。

もちろん新しく加賀に来た人も大歓迎です!
最近は外国の方々も増えているので、是非いろんな人に来てもらいたいです!

2017年9月9日(土)〜10日(日)10時〜21時

開催場所:石川県加賀市役所 周辺


伝統を繋いでいく男たちの背中