あの早稲アカから独立。地元に戻って立ち上げた私塾を市内最大級に成長させた男のはなし。

石川県加賀市には、あの芦田愛菜も通っていたことで
最近話題となった早稲田アカデミーの創業期を支え、
その後地元である加賀にUターン移住して私塾を立ち上げた方がいらっしゃいます。

塾の規模は年々大きくなり、現在は市内最大級になるほど。
そんな私塾を取材しました。

SIPS(シップス)

石川県加賀市にある小・中学生向けの個人経営塾。
2000年に開校し現在17年目を迎える。

「勉強は知的好奇心からくるもの」という想いをもと、
学問本来の持つ楽しさを伝える同塾は、その生徒数を毎年増やし、
現在は170名を超える市内最大級の塾に成長している。

楽しいばかりではない受験勉強のなかでも、
先の未来を常に説いて指導にあたる先生の姿に共鳴し、
能動的に学ぶ生徒たちも多い。

また、卒業後も先生やSIPSを慕う生徒も多く、塾を通じた郷土愛の形成にも繋がっている

久保田先生の経歴

1959年、石川県加賀市生まれ。

高校卒業後、浪人時代を東京で過ごしその後早稲田大学へ入学。

大学卒業後はゲーム会社に入社。
その後、創設して間もない早稲田アカデミーへ転職し13年間勤務。

今や都内最大手ともいわれる早稲田アカデミーの創業期を担ってきた一人である。

37歳のとき、かつて両親と交わした「いつか戻る」との約束を果たすため石川県にUターン。
金沢の塾に就職し3年間の指導に当たった後、加賀市で進学塾SIPSを2000年に開校。

ー 小学生でも塾に通う子供たちがいるのに驚きました。

小・中学生のときに、どんな教育環境で育つかはとても大切。

高校生になるともう大人だからね。
やるやらないは別として、勉強しないといけない理由はそれぞれ分かってる。

でも小・中学生はそれが分かってない。特に小学生。

部活や定期テストで毎日忙しく過ぎていく環境のなかでも勉強ができる子は、
ちゃんと物事の比重が分かっていて、小学生のうちから「将来大学に行く」って決めている。

自分も小学生の時から親父の学友と交流する機会が沢山あったんだけど、
その人たちが輝いてみえて、それで自分も大学に行こうと決めた思い出があるんだよね。

まずは大学について考えるという環境を与えてあげないと、子供たちは変われないよ。


ご自身が大学生だった頃の写真を懐かしそうに見せてくれた

ー 地域の教育環境について、どう思われますか?

中学受験がないから、自分のレベルを知る機会が少ないのは残念だと思う。

ただ地域の私塾同士の繋がりが強いのは魅力的かな。

同じように中学生向けの塾を開いている先生がいるけど、
志の部分が凄く似てるから、良く教育について深い話をしたりする。

SIPSで働いていた塾講師が、今は市内で高校生向けの塾をやってるんだけど、
そことも上手く連携して、中学から高校へ切れ目ない教育環境が生まれたりね。


卒業の際に生徒が書く作文たち 塾への想いが詰まっている

ー 開塾から17年。通う子供達は時代と共に変わりましたか?

子供たちはそんなに変化がないように思う。

でも親が変わったかなあ、親の甘やかし度は昔より激しくなってる。
スマホとゲームを与えて、それを親がコントロールしきれてない印象があるね。

ルールを決めて、必要だったら納得できるペナルティを課す。
優しさを履き違えず、導いてあげてほしいね

でも親御さんも、子供のことがどうでもよかったら塾なんて来させないからね。
子供たちには、親の愛があってここにいるんだよと伝えている。


生徒たちと合宿に行くことも!メリハリを大切にしていると話してくれた

ー 先生自身、この17年で何か変化はありましたか?

「楽しくなければ塾じゃない」「今日は塾の日だ!楽しみだ!」
思ってもらえる場所にしようというのはずっと変わらない。

始めたばっかりの頃はこの地域にもいろんな私塾があったけど、
他の塾では学ぶ楽しみを得られなかった子たちを集めて育てようとスタートさせた塾だから。

でも変わったことももちろんあって、もう58歳になった。

だから次世代のことは良く考えるようになったかな。
現にSIPSでも20代の先生を雇ってるし、これからは彼らの時代だと思う。

でもそこはやっぱり「はい定年、はい交代」じゃなくって、
師匠越えをしてほしいなあと思ってて、そう思うとまだまだ先の話だね(笑)


いま一緒に働いている20代の先生も、実は教え子だという

ー この人口減少社会における、私塾の役割をどう考えますか?

俺のやってることは、もしかしたら加賀市から人を減らすビジネスなのかも。

SIPSに入って、外の世界に興味を持って、市外の大学へ行く。
そういう子たちも多いし、むしろそうじゃないといけないと思う。
教育というのものは、本来視野を広げるために行うものだしね。

でも授業の事あるごとに「俺はこの町が好きだ」って伝えてるんだよ。
加賀市は自分のやってることに情熱を持っている人が根付く町だと思ってるから。

大学を卒業した子供たちから見ても魅力的な町であり続けることが、
これからの人口減少社会で求められて行く事なんじゃないのかな。


先生自身、日本をバイクで一周したり、海外旅行に行ったりとアクティブな方
外の世界を満喫してきた先生を敬い、卒業後アドバイスを求めてSIPSを訪れる生徒も多い

ー 今後のご自身の目標を教えてください。

この町は、”ザ・日本”という感じの町。

山も海も温泉もあるし、食やお酒も最高で、塾を経営する傍ら、
春になれば山菜採りをしに行ったり、ツーリングしに行くこともあるし、
釣り好きが講じて船も買ったし船舶免許も1級まで取った。

死ぬまで面白い方が良いと思ってるから、まだまだ楽しむつもり。

だから仕事も遊びもライバルがほしいな(笑)。
早く教え子たちには師匠越えしてほしいよ。


塾内に置かれるバイク、ボートたち

進学塾SIPS

電話:0761-77-6464

住所:石川県加賀市山代温泉山背台1−49

公式サイト:http://schoolsips.wixsite.com/schoolsips

久保田先生のブログ:http://blog.livedoor.jp/schoolsips/


取材後記:
久保田先生に1対1でじっくりお話を聞かせていただくのは初めてのことでした。子供たちを取り巻く教育環境について、真摯に、だけどとっても面白く語っていただき、惹きこまれっぱなしのひと時でした。なぜ勉強が楽しいのか、どうしてそれが今必要なのか、この環境を与えてくれる親や周りへの感謝はあるのか、そんな事を真っ直ぐ話してくださった久保田先生をみていると、SIPSの卒業生たちが大人になっても久保田先生を慕っているのか良くわかります!貴重な経験をありがとうございました!