【石川県加賀市】空間コーディネート×花屋「NOOK Green」の仕掛ける挑戦とは!?

石川県加賀市の梨の名産地の近く、創業53年目の花屋が
仕掛ける面白い会社がありました。

その名もNOOK Green(ヌックグリーン)、ぜひご覧ください。

NOOK Green

石川県加賀市を中心に活動する空間コーディネート会社。
お花屋を営むご主人と元ウエディングプランナーの奥様とで
2016年9月に共同創業し、現在二年目を迎える。

「花屋」と「ウェディングプランナー」というお互いの強みを生かし、
地域のショップディスプレイやイベントのアートディレクションなど
その活動は幅広く、地域に新鮮なアイデアや企画を提供し続けている。

なかでも、地元のウエディングプロデュース会社と協力して行う
結婚式の空間コーディネートは、「式場内に花を飾る」という
ウエディングにおける従来の花屋の枠を越え、ペーパーアイテム類のプランニングまで担当。

「コンセプトづくりから行う空間コーディネート専門店」として新境地を開拓している。


NOOK Greenの事務所兼コンセプトショップの内装

中村ご夫妻

夫・肇伸さん(としのぶ)さん

石川県加賀市出身。地元・大聖寺エリアの花屋「中勝商店」の三代目。

高校卒業後、「家業からは離れ、自分の道を見つけたい」と地元を出て名古屋で就職。
建設機械の販売リース会社のサラリーマンとして、建設業界に関わり現場も多数経験。

その後、26歳の時に両親から戻ってきてほしいと頼まれ、
中勝商店の名を残すべく、家業を継ぐことを決意

1990年代後半にUターンした後、「下請けに甘んじない花屋」として
従来の経営路線から地域に入り込んだマイノリティな花屋へと舵を切る。

妻・知里さん

石川県小松市出身。結婚によって加賀市に移住。

大学卒業後、地元の建築系企業で10年あまり事務方として勤務。
34歳の時に「人に喜んでもらえる仕事がしたい」と畑違いのサービス業の道を志し、
ウエディングプロデュース会社に転職。

プランナーとして活躍した後、
花屋の跡継ぎである旦那様との出会いをきっかけとして花の世界へ。

NFD(日本フラワーデザイナー協会 )講師の資格・プランナーの経験を生かし、
プレ花嫁向けのワークショップや感度の高い地元ウェディングを提案し続ける。

ー NOOK Greenをスタートした経緯を教えてください。

知里さん(以下:知):
主人が後継ぎとしてやっている中勝商店は、ずっと大聖寺で商売してきた花屋ですが、
どんどん人が減っていくし、花屋じゃなくても花を売るような時代になってきていて。

そんな現状を見て、これまでの形態を変えずに花の小売りをやっていっても、
徐々に商売が成り立たなくなるんじゃないのかという危機感が大きかったです。

じゃあどうやっていこうかってなった時に、お互いの強みを生かして、
「花自体を売るんじゃなくて、花を使った空間を売ろう」と考えました。
それがNOOK Greenの始まりですね。


お花一本ずつの販売も可能だが、全体の空間を感じてもらいたいという知里さん

ー Uターン後、今までの花屋の仕事に疑問を感じ方針転換。
当時の心境を教えてください。

肇伸さん(以下:肇):
まず基本的なところを話すと、この辺の花屋は小売だけでは売上が立たないから、
どこも葬儀会社や結婚式場の下請け会社として仕事をしているところが多いんだよね。

だから僕が加賀に戻ってきた後も、最初の5年位は葬儀会社の下請けをやってた。

でもずっと違和感があって、それは自分がやった仕事に対して、
「今日は良い」とか「今日は悪い」とかそういう評価が、
喪主からも元請けからも無いのがつまらなかったから。

良くても悪くても、何らかのリアクションがある仕事の方が面白い。
それで思い切って葬儀会社の下請けは辞めた


「当たり前のはずなのに、それが出来なくなってた」と当時の事を語る中村さん

ー その後、どのように展開していったんですか?

肇:
ちょうど、ショップディスプレイとかイベントの仕事がちょこちょこと増えてきた。

ただ当時はまだ景気は良くて、物を並べれば売れる時代だったから、
今ほど「空間」ってものは意識されていない時代だったと思う。

だから、当時はマイノリティすぎて全然食える状況じゃなかった。
単なる独りよがりの自己満足。本当に(笑)。

でもそれを続けているうちに、「花を使って空間を作る」ってことが
自分でもすごく面白くなってきた。

お客からの声も直接聞けるし、「店の売上があがった」とか結果が見えるのも嬉しかった。
そんな時に出会ったのが、ウエディングプロデュース会社の”カーロカーラ”

株式会社カーロカーラ:
石川県加賀市に本社をおく、ウエディングプロデュース会社。結婚の本質を伝えることに重きをおき、地元ウェディングや温泉旅館ウェディングなど、会場や時代にとらわれない本質的なウエディングを実現。

URL:http://www.carocara.com/

こことの出会いは色々と面白くて、花を使って空間をデザインするのはもちろん、
コンセプトから一緒に考えて、その為に必要な什器やディスプレイ小物を用意したり、
テーブルコーディネートまで考えたり、今のNOOK Greenの礎がどんどん始まった。


NOOK Greenの店内ではフォトウエディングの撮影も!

ー 模索しながら新しい道を探していったんですね。

肇:
時代が変わってきて、欲しい「モノ」が簡単に手に入る時代になったからか、
どういう場所でどんな風に過ごすとか、それが出来上がるまでのストーリーだとか、
形のないものに価値を感じる人が増えてきたなと思う。

特に若い人はそれが強いように感じる。
だから最近は若い子たちと交流して、若い価値観を理解するように努力してる。
というよりむしろこちらが感性を育ててもらってる

花屋って基本目的がないとなかなか敷居を跨ぎづらい商売だと思われとるけど、
NOOK Greenでは「お茶飲みに寄ったわ」ってふらっと来てもらえる若い子も多くて、
そういう世代とコミュニケーションが取れるのは物凄いありがたくて大切。


不定期で行うワークショップは、感度の高い女性たちで毎回賑わっているという。

 ー NOOK Greenというネーミングも素敵です。

知:
「NOOK」って”部屋の隅”とか”隠し部屋”みたいな意味。

そんな目立たないところにいいもの、素敵なものがいっぱいあって、
「そこにいるだけでワクワクする♪」みたいな場所にしたいなと思っています。

だからお店にくる女子たちが「ずっとここにいたい!」と言ってくれると、
本当に嬉しい。にんまりしてます(笑)


取材中も実際に若い女性が訪れ楽しそうに会話するシーンもあった。

ー Uターンして20年。中村さんは地域の活動も沢山されていますよね?

肇:
祭りやイベントまで色々やっとる。

こういう活動をするのは「やるからには目立ってなんぼ!」っていう思いもあるけど、
それを見とる若い人が「こんな野郎でもできるんなら、自分たちでもやってみよう」って
思ってくれたらいいなっていうのもあって。

そこで生活している若い奴らが、意欲を持って自分から何かしないと地域は変わらない。
失敗しても周りから何を言われてもいいから、とにかく挑戦してみて欲しい。

そんな人がどんどん出てくるといいと思うし、
若い子が何かチャレンジする時には、自分も出来る形で精一杯応援したい。

僕の場合は、周りが儲からんと、僕らの仕事がなくなるんで。
花があっても空腹は満たされないからね(笑)


中村さん、実は加賀市の伝統である坂網猟の猟師でもある。狩り場の近くで撮影した一枚。

ー 最後に、これからチャレンジしたいことはなんですか?

肇:
今やってる事の延長で、「加賀もんなめんなよプロジェクト」っていうのを考えとる!
まあ、ネーミングは冗談だけど(笑)。

石川県加賀市は”消滅可能性都市”っていわれるけど、地元で頑張るセレクトショップとか、
いろんなジャンルのアーティストとか、実はすごい力のある人がいっぱいいるところ。

こういうレベルの高い人たちが業種とか組織とか関係なく一つのチームになれば、
金沢や東京にも負けない良い物が提供できると思う。

とりあえずは、ウエディングのカテゴリにおいてそれをやってみようと。

地元の子たちが地元で出会って所帯を持つのに、
わざわざ金沢まで行って結婚式をするカップルが多い現状が悔しいんだよね(笑)。


実際にお二人が会場装飾を手掛けた地元ウェディングのお写真。
什器のソファなどは地元のセレクトショップからレンタルしたそう。まさにチームで動くウエディング。

知:
結婚式って、夫婦として歩む二人の歴史の原点になると思います。

だからこそ、二人に縁のある場所や長い人生の中で
立ち返ることのできる場所を作って欲しいし、それにこだわって欲しい。

値段や写真で選んじゃダメ!(笑)

地元の良さを生かした、例えば”温泉ウエディング”なんかは
プランナーの頃から何回も担当させていただいているんですが、
親戚や友人で温泉に一泊して、二人の結婚をお祝いしながらゲスト同士も親交を深められる。


温泉ウエディングの様子。このあと皆で温泉に浸かり、さらに親睦を深める。

加賀らしいこんなハッピーな結婚式をもっとやって、
加賀市に縁のある幸せな夫婦、幸せな家族がたくさん増えていけばいいなと思っています。


こちらも温泉ウエディングの様子。NOOK Greenならではの装飾は若い新郎新婦からも好評。

NOOK Green

住所:石川県加賀市山田町平拍子72 1F

TEL::050-3569-4566

URL:http://www.carocara.com/nook-green/

facebook

instagram


取材後記:中村さんは、地域のお花屋さんでありながらワークショップや空間デザインなどの先進的な取り組みも沢山されていて、「なんであのお花屋さんは地域で凄く目立ってるんだろう..」と前々から気になる存在でした。そんな中村ご夫妻にお話を聞けて、凄く嬉しかったです!話を聞いてみると、若い人の意見を吸収しながら従来の花屋の在り方を変えていく新しいスタイルを貫いていて、目立つのも納得のNOOKGREENさんでした!凄く勉強になりました。中村さん、ありがとうございました!